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風立ちぬ

 風立ちぬ
 監督/宮崎駿

 見てきた、初日に。
 宮崎駿監督の最新作、監督作品としては五年ぶりになる。
 タイトルやイメージボードからして、宮崎監督の一般的なイメージでもある、純粋な子供向け作品を作る監督、という印象から大きく逸脱しているのがすぐ分かる。
 その点からして、本作は、そのいつものようなもの、ではないことが理解できる。

 1920年代の日本、大震災にも見まわれ、日本は酷く疲弊していた。
 少年/堀越二郎、彼は空と飛行機に憧れ、飛行機を作る技師を目指していた。
 彼が夢を追い続ける中、やがて日本は戦争へと突入してゆく。

 という話。
 宮崎監督がミリタリーの造詣に深いのはご周知の通り。特に戦車には軒並みならぬものがある模様で、モデグラやら専門雑誌にもコーナーを持つくらいである。
 そもそも、この風立ちぬ自体、宮崎監督の漫画自体が原作となっている。
 同名作として、堀辰雄の「風立ちぬ」もあるが、そちらからも着想を得ているようである。なので、同じタイトルではあるけれど、堀辰雄の風立ちぬの映像化、ではない。
 …こちらの風立ちぬも、何度も映像化されているね、そういえば。
 で、本作の主人公は、零式艦上戦闘機…ゼロ戦の設計者として有名な、堀越二郎。
 彼を半生を描いた話であり、ジブリ作品、ひいては宮崎作品としては非常に珍しく、実在の人物を取り扱う作品となっている。

 作品自体は非常に素晴らしかった、面白い。
 久々に渋いジブリを見たと大満足、もう一回くらいは劇場で見たいものである。
 しかし。
 個人的には大変良かったのですが、客観的に見ても大衆性は無く、合う人と合わない人がハッキリ別れる作品です。技巧的に見ても、違和感を覚えるような人も多いかもしれません。
 技巧的、という点ではカットの繋がりや構成が非常に大雑把なところでしょうか。
 見ていて、内容が流れるように頭に入ってくるのが最良の構成だとは思うのだけど、場面の切り替わりが急だったり、カットの繋がりが分かりにくかったりするところが多い。
 勿論、全く分からないほどではないのだけど、視聴者に優しくないのは確か。
 構成に関しても、盛り上がりどころが全く無く、起承転結という流れになっていないと指摘できる。淡々と始まり、淡々と進み、淡々と終わってしまう。
 映像的な派手さもない分、それが視聴者の集中力を奪うことになる。
 つまり、退屈な映像になってしまう、というワケだ。
 特に、今回は実在の人物を取り扱った作品なので、作品を象徴するようなマスコットキャラクターもいなければ、ファンタジーな要素もほとんど無い。
 ドキュメンタリーのようなもののため、興味のない人には抵抗もあるだろうし。
 特に、トトロみたいなものを期待している子供は間違いなくアウト。
 むしろ、これを楽しめてしまうような子供は、ある意味怖いです。
 そんな作品。

 実際、世間の賛否は二分されているようです。
 それは仕方ない、自分は凄い面白かったが、これを人に勧めることは出来ない。
 この作品から感じるのは、夢を追い続ける強さや誠実さ、もっと純粋に言えば、生きることそのもの美しさでもある。そこに、エンターテイメントは存在しない。
 一人の青年の、夢と、挫折と、恋と、ひたすら真摯に駆け抜けた人生を描いたもの。
 そこには、彼のように夢を持って生きろ、という啓発的なメッセージも、戦闘機を作った技師の物語という視点での、反戦や戦争美化の思想も感じられなかった。
 作品のテーマも、視聴者に訴えたいことも、この作品には無い。
 ただ、彼は精一杯生きた、それだけである。
 そして、それがたまらなく美しい。
 娯楽にはしるのなら、戦闘機の空戦シーンをもっと入れることも出来たろうし、思想的なことを盛り込むことも出来たろうし、ラブロマンスを深く描くことも出来たハズだ。
 だが、それをやるのは並の作家、である。
 宮崎監督は、やはり並ではなかった。今回は、今まで以上にそう感じた。
 恐らく、最後の作品になるだろうけども、それがこの作品で良かった。
 娯楽性で言うのなら、過去作品の方が勿論高いのだが、風立ちぬからはありのままの、全裸の宮崎監督を感じた。というような、気がするのである。

 そんなワケで。
 ハッキリ言って人には勧めません、見ようか見まいか迷っているのであれば、大人しくTV放映かソフトレンタルが開始するまで待った方が良いです。
 特に、ジブリで宮崎監督だからって、子供を間違っても連れて行かないように。
 難しい、とか、大人向け、とかそういう領域の作品じゃないです。これ。
 人間の感性へダイレクトに突撃してくるタイプの作品なので、理解するよりも感じるしか無い。
 そういう意味では、確かに子供でも楽しめる可能性も…あるかもしれませんが…
 内容以外のこと。
 やはり背景美術と作画は素晴らしいです、今回はあまり過剰にデフォルメしてない作画なので、内容を考えるとアニメにする意味があったのか、という疑問もあるのですが。
 でも、やはりこれはアニメじゃなくては駄目なんだろうな、とも思う。
 他、主人公の二郎を演じた庵野秀明の賛否、は特に別れている印象。
 個人的には、最初の一声には違和感があったのですが、それもすぐに消えました。庵野監督も技術屋なので、むしろ性格的に合ってたんじゃないかな、と思います。
 自分は肯定派。
 音楽やSEには、一部実際の人間の声を加工して使われているのですが、これはちょっと自分もどうかと思うトコロもしばしば。そこまで露骨ではないのだけど。
 折角のノンフィクション(当然、一部創作ではあるのだが)作品なので、BGMはともかく、SEなどは実際のエンジン等の音を再現して欲しかったな、と思う。
 何かしらの意図はあるのだろうけどね。

 とにかく、本当、良い作品でした。思わず泣くところだった。
 面白いし、凄いけど、本作はやっぱり、美しい作品、である気がする。
 それは、本作のキャッチコピーでもある、「生きねば」にも通じている。と、思う。
 生きることは、あらゆることは、美しいのである。
 世間的な評価や興行には期待出来ないだろうが、個人的には紛れも無い傑作としたいトコロ。

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波多緒理樹

Author:波多緒理樹
アニメ見たりゲームやったり
同人描いたり酒飲んだりする
どこにでもいるような人間

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