スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

言の葉の庭

 言の葉の庭
 監督/新海誠

 見てきた。
 新海誠監督の新作、個人的に好きなのでこれは外せない。
 前作である星を追う子ども、がどーにも受付なかったのだが、その理由は、新海誠の映像を見に行ったら、期待していたものとは別のものを出されたから、でもある。
 新海監督はとてもクセのある、というか非常に分かりやすい個性を持つ演出と映像を作る人でもあるので、当然、多くのファンはその強烈な新海誠の映像、を求めるワケだ。
 が、星を追う子どもは、その期待に応えられるものではなかった。
 新しい方向性を模索することは美徳だと思うけども、折角の唯一無二の武器を捨ててまですることではないな…と考えるのは、ファン故のワガママでもある。その辺はいかんともしがたい。
 そして、久方ぶりの今回の新作である。
 今度は、どういうものになっているのだろうか。

 靴職人を目指す高校生の少年/孝雄、彼は、雨の日になると庭園に寄り、靴のデザインをスケッチすることが日課だった。しかしある日、庭園には先客の女性が座っていた。
 雨の日に必ず現れる彼女と、約束もない、雨の日だけの出会いが続く。
 そしてそれは、少しづつ、二人の心を変えてゆく。
 
 というお話。
 新海作品は、現代を舞台にしつつ、若干のSFやファンタジー要素を組み込むことが多いのだが、今回はそういう要素は一切無し。そういう意味では、秒速に近いかもしれない。
 少年の視点から見た恋物語、という点でも似たようなイメージがあるかもしれない。
 が、秒速は初恋を引きずっていった男の話であり、この言の葉の庭は、その対象となるのが一回りも年上の女性、という点で大きく異なる。物語上で占めるウェイトがそもそも違う。
 言の葉における恋とは、想いとは、色々と複雑ではあった。

 個人的にはとても良かった、久しぶりに極上の新海作品を堪能できたと思う。
 無機質でやや自嘲的なモノローグや、ことあるごとに映る電車と人々の喧騒、やたらと耳に残るピアノのBGM、相変わらず美しい背景、そしてわざとらしい程大胆な演出…
 うーん、たまらない。
 まさに、これこれ、こういうのが見たかったんだよ!がぎっしり詰まった作品。
 やはり、主人公である孝雄がとても良い。新海作品主人公らしく、年齢にしてはやや大人びた思考と言動をしており、しかし歳相応の青臭さが有り…その絶妙なバランスが素晴らしい。
 背伸びをしようとしているけど、仕切れない。大人になろうと必死にもがいているけど、自分がどうしようもなく子供ということも、痛いほどに自覚している。
 新海誠という監督は そういう、思春期から大人に変わっていく時期の、少年の心というのを、実に細やかに表現できる作家だと思うのだ。
 ただ、ちょっとオシャレ過ぎないか?という指摘もあるだろけども。
 そういう、着飾った部分含めて、とても良い。
 …新海誠好きな人は、村上春樹とか岩井俊二とかも好きだよね、という話を聞いたことがあるが。
 そういえば、俺どっちも好きだったわ。共通する部分はあるよね、うん。

 ストーリーとしては、とても単純な話。
 必死にもがいている少年が、自分とは違う世界を見ている大人の女性に出会い、惹かれていく。その中で、女性も純粋な少年に救われていく、という構図。
 言ってしまえば、手垢のついたような構成でもある。
 靴職人を目指す孝雄は、常に今の自分が不安でたまらない。それは夢への焦りであったり、未熟さへの憤りであったりする。もがくことしか、彼には出来ない。
 そして雨は、そんな彼の心を慰めるかのように降る。
 そんな彼と出会う女性/百香里は、彼にとってまさにその雨そのものでもある。自分を否定もせず、かといって無責任に肯定もしない。ただ、そこにあるように居る。
 当然百香里にも、歳相応の悩みや迷いがある。が、決してそれを彼には見せない。
 お互いに、それが都合の良い関係だと理解しているようでもある。
 終盤での発言にもあるが、それが、二人にとっての癒しだったのだろう。

 勿論、そのままで終わるワケでもなく。
 中盤、百香里の足をモデルとして、靴を作ろうとするところから話は動き出す。
 で、この足の寸法を測るシーンがとてつもなくエロティックで良い。実に艶かしく、そして執拗に、百香里の足や、その足に触れる孝雄をねっとりと描いてくれる。
 セックスの比喩と言えばチープかもしれないが、単純に肌に触れることを許した、という意味合いだけでも、決定的に二人の距離が縮まった印象的な場面だ。
 その後は、物語を締めるための展開が続く。
 話はオチを含めて、特に意外性のあるものでもなければ、予想外のものでもなかったのだが、着地地点のしっかりとした「良い話」で落ち着いたのはとても良い。
 後味も悪くなく、視聴後は実にさわやかな気持ちになれるだろう。
 …ただ、これを恋物語、として見るのはどうかな、とは思う。
 正直なところ、孝雄の抱いていた想いは恋ではなく、憧れとか羨望とか、渇望している大人というイメージが具現化した存在に対するもののような気がする。
 当然、百香里も孝雄には恋愛感情は抱いていなかっただろう。
 恋に変わる一歩手前というか、理性や罪悪感がそれをかろうじて防いでたようにも見える。
 自分が純粋な少年と釣り合うほど、真っ当な大人でもないと思っているようにも見える。
 …劇中の描写だけ見ると、どうにも不倫してたようなところもあるしね。そういうところ含めて、彼女にとって孝雄は、自分を浄化してくれる存在以上ではないんじゃないかしら。
 と、いったように、前半よりも感情が全面に出てくる後半は面白い。
 新海脚本の会話劇は、こそばゆくて、良い。

 そんなワケで、個人的には大変満足しました。
 星を追う子ども、には不満タップリだったので、その反動もありますが。
 1時間に満たない上映時間の短さもいい、やはりこの人はショートフィルムが似合っている。短い中で、日常を切り取ったような話を描いて欲しいものである。
 しかし、俺は大好きだが、この手の映像が苦手という人はかなりいるだろう。
 何より、とても地味である。背景美術の美しさは他アニメと比較しても遜色のないどころか、特徴含めて極まっているが、映像的に派手さは無い。全く。
 キャラクタ達も全体的に暗めで、テンションも常に低い。ダウナーなモノローグも多いし、今回は雨ばかり降っている場面が多いので、明るい気分にはなれないだろう。
 なので、純粋な娯楽作品、を求めている人には辛い作品でもある。
 ただ、その短い上映時間、そのために設定されている安い特別価格もあって、何となくや暇つぶし程度に足を運んでみるのもいいかもしれない。気楽に見れるのは良い。
 …もう一回くらい見たいな…
 他。
 同時上映として、監督が手がけた野村不動産グループのショートフィルムである、「だれかのまなざし」も見ることが出来る。企業系のPRフィルムも作るの多いね。
 こちらも、とても短い作品だが、実にらしい映像だった。
 こういうハートフルな路線も良いな。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

波多緒理樹

Author:波多緒理樹
アニメ見たりゲームやったり
同人描いたり酒飲んだりする
どこにでもいるような人間

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。