おおかみこどもの雨と雪

 おおかみこどもの雨と雪
 監督/細田守

 見てきた、初日に。
 細田監督久々の新作、個人的には結構好きである。
 ただ、デジモンやら時かけは大好物なのだが、前作であるサマーウォーズは全く合わなかったので、自分の中ではちょっとだけ新作に対する期待感が希薄になっているのは否めない。
 似たような印象を持つのは、新海監督とかもそうかな…右肩下がりというか。
 それはともかく、見なければ何も始まらない。

 都内で一人暮らしをしている女子大生/花は、ある日、出席表を提出しないで講義に参加する男/彼に気づき、声をかける。そのまま、二人の奇妙な関係が始まり、お互い恋に落ちるのだが…
 その彼は人間ではなく、狼男であった。

 という話。
 過去作とはガラリと印象を変えてきた感じ、設定にしろ、コンセプトにしろ。
 前二作がSFなら、今作はファンタジーという印象。現代のおとぎ話的な。
 なので、最初から「これはリアルではないよ」ということを提示されているワケで、狼男の存在が云々、とか言ってしまうのは流石に野暮であり、本質はそういうところにある作品ではない。
 この辺の微妙な描き方は、細田監督独特のセンスでもあるような気はする。

 個人的には、面白くなかったです。
 世間的には評判良いみたいですが、純粋につまらなかったとハッキリ言います。
 ただし、作品自体の出来はとても良いとは思う。
 作品の出来の良さ、と面白さは決して比例するものではないし、そもそも面白さという概念はとても曖昧なため、人によって異なるとも言える。何かちょっと、言葉にし難い感じなのですが。
 あくまで、俺は面白くなかった。
 でも、出来は良いし、人によっては面白い作品だとは思います。

 この作品、最初から最後まで恐ろしく蛋白なんですよ。
 事実をただ淡々となぞっているだけのようにも思える、それは全体的に大きな起伏があるわけでもないからかもしれないし、モノローグによる回想が多いせいなのかもしれない。
 とにかく、大きく物事が動かないので、見ていて退屈になる。
 その理由は、主人公達三人の家族に、何かしらの目的、が無いからだ。
 提示された現状に対してどう動くか、は細やかに描かれているので話としての破綻は無いのだけども、全体として最終的な着地地点が提示されないので、見ていて期待感が無いのだ。
 そのため、いつ山場がくるのか、と期待していたら。
 そのまま淡々と終わってしまった。
 これでは、盛り上がりようにも盛り上がれない。
 中盤で、もっと家族を取り巻く現状で、大きな変化とそれにともなうカタルシスがあれば良かったのだけど、どうやら単純にそういうのを求める作品ではないようだ。

 本作には、様々な要素が詰め込まれている。
 例えば、母親の強さというものだったり、子育ての奮闘記というものであったりする。子供の自立と成長話だったり、異なる人種と結ばれたことによる苦難だったりもする。
 それらが、平坦ながらも、実に上手く咬み合って話が進行していく。
 事実派手さはないが、おおかみという要素はあくまでエッセンスにしかすぎず、脚本そのものは上述した通り視聴者にとって非常に分かりやすく、共感しやすいものになっていて。
 普段人が生きている上でも、身近に起こりうる普遍的な事柄を、複雑にせずストレートに、且つじっくりと描いているという印象を受けた。
 そのため、主人公を取り巻く環境に、感情移入したり。
 作中に登場する人物達に、自分の視点を重ねて映画を視聴したりするような人は、この内容を追体験として心に刻むことになるのだけども。
 そうなると、確かにとても良く出来ている話なので、このストレートさ故に、感情を揺さぶられたり、面白さを感じたりするのだと思います。
 ただ、そういう見方をしない人。
 映画にしろ、何にしろ作品を客観的な物語として楽しむ人には、ちょっと厳しいかもしれない。俺、そもそもドラクエの主人公とかにも自分の名前付けれない人だし、昔っから。
 ここまで起伏がないと、やはり楽しめない。
 個人的に合わなかったサマーウォーズであっても、少なくとも中盤から終盤にかけての山場や、主人公の最終的な着地地点みたいなものがあったので、それは良かったけども。
 本作にはそういうのも無いので、辛い。
 他、自分が未婚の男性であるということも影響しているかもしれない。
 シングルマザーの話、を理解するのは難しいのかもね。

 他、違和感があったのもいくつか。
 特に主人公である花が精神的にタフ過ぎるのが少し引っかかった、当然、母の強さ、を演出する意図もあったのだろうけども…ちょっと行き過ぎなような。
 弱音を一度も吐かず、いなくなった彼のことを思い出して泣くこともなければ、子供達に行き場のない不満といったものを撒き散らすこともない。彼女は、とても強い女性だ。
 それが、逆に怖かった。
 そんなことしてる暇もないくらい、一人で子供二人を育てるということが大変、というのもあったんだろうけども、花が女性の強さの理想と象徴過ぎて人間味を感じないというか…
 それに加えて、自分の置かれている状況に対して、これが幸福なことだ、と思い込むことによって自分の心を殺しているようにも見えた。そういう危うさが、彼女にはあるような。
 子供の存在に依存していた、という側面でもあるだろうが。
 そういった点で見ると、ラストの流れは子供の自立であり、且つ花の子離れでもあり、それでいて自分の今までやっていたことに改めて向きあった瞬間なのかもしれない。
 そして、本作のクライマックスとしてキモになるシーンでもあるのだが。
 あまり盛り上がらない…俺の立場では、やはりこの作品は難しいのだろう。

 そんな感じです。
 話自体はとても良く出来ているし、作品のテーマといったものも明確です。
 小さい子供には平坦で退屈かもしれないけども、小難しい話ではないので、家族で見に行くのもそんなに悪くない。ベッドシーンあるので少し戸惑うかもしれないが。
 子供を持つ親御さんの方が共感を持ちやすい作品ですし、女性受けも良さそうな内容でもあった。見る人によって受け取り方も異なるんじゃないかしらね。
 反面、未婚男性の俺には難しい側面もあった。
 とは言え、自由奔放に動きまわるおおかみこどもを見ているだけで楽しいし、子育て奮闘記も田舎での暮らしもシーンとして見る分には面白いし、子供の成長の描き方も細やかで。
 いやホント、作品の出来はとても良いし、好きな部分も多いんですよ。
 特に雪がらみ、雪可愛いし、凄い微妙な年頃の女の子の繊細さが上手く出てる。
 雨の方は、ちょっと理解が追いつかなかったけども。最終的に自立を決断するのはともかく、もっと男の子的な発想と描き方をして欲しかったな。獣の考え方はよく分からん。
 悪人という悪人も出なかったし、後味も爽やかだ、
 でも、やっぱり平坦であんま面白くない作品でもある。
 しかし、大方の人には受け入れられる作品だとも思う。少なくとも、俺の立場と感性では、面白さは理解できるけども、それを感じることは出来なかった、という感じで。
 ちょっと残念、次回作に期待。
 またデジモンみたいなの見たいなぁ。

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波多緒理樹

Author:波多緒理樹
アニメ見たりゲームやったり
同人描いたり酒飲んだりする
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