けいおん!

 けいおん!
 監督/山田尚子

 見てきた。
 同じ映画を二回見に行ったのは、久しぶりかもしれない。
 …というのも、最初の上映が映写機の不調により途中で中止、冒頭30分くらいで館を出ることになったという、何ともレアなケースにぶち当たってしまったからだ。
 そんなワケなので、改めて見に行く。
 場所は郊外にある映画館で、レイトショー。
 そういう状況にも関わらず、そこそこ席が埋まっており、客層も幅広い。
 一人でやってきている初老の男性とか、一体何を期待しているのだろうか…

 進路も決定し、後は高校生活も卒業するだけ、となった桜ヶ丘高校軽音部の面々。
 ことの成り行きにより、卒業旅行としてロンドンへ向かうことに。はしゃぐ彼女らではあったが、その胸中には、軽音部に一人残ることになる後輩/梓への思いがあった。

 そんな話。
 劇場版ということで、どういう話になるかとは思っていたのだが。
 TVシリーズにおける、最終話までの空白の時間を埋めるとともに、いかにして最終話への流れに至ったか、というのを保管するような内容になっている。
 ので、基本的にTV版を見ておいた方が、より楽しめるだろう。
 とは言え、元々設定やキャラクタが複雑な作品ではないので、TV版/原作ともに知らなくても、特に問題は無く一本の作品としても見ることが出来るとは思う。
 それでも、ほとんどファン向けに作られたものなのだろうけど。

 個人的には結構面白かったです、満足。
 見る前の事前情報で危惧していたのは、けいおんにおける間や演出のノリが、映画という長時間の枠に堪えられずに退屈になってしまわないか、ということが一つ。
 それを踏まえた上で、いつものけいおんの内容をやると、映画的に地味にならないか。
 逆に、派手なことをやって、求められてないものになるのではないか。
 というものだったんですが、その辺は杞憂だったようです。
 全体の雰囲気やノリはTV版と変わらずなんですが、展開の起伏を上げすぎず下げすぎず、その上でキャラクタ達の普段と変わらない掛け合いを純粋に楽しむことが出来る。
 そのため、大きな展開はないものの、常に一定のテンションを保っていることになるので。
 スクリーンで展開される、少女達が送る日々を、ダラーっと安心して見ることが出来る。
 けいおんのノリを二時間もやられると途中で絶対に飽きるよな、と思ってたんですけど、これが不思議と退屈になることもなく、最後まで楽しむことが出来た。
 何度も読んでいるのに、何気なく手を伸ばして読み返してしまう本のように。
 気楽さというか、安心感というか、そういうのがあるのだと思う。
 ここは素直に感心した、派手な脚本でも無いのに、演出が上手いのかな。
 そして、その肝心の内容は非常に地味ではあるのだけど、TV版とは地続きでもあり、むしろちゃんとユーザの期待していたものを作ってくれたと思う。
 卒業旅行!ロンドン!
 そういった特別なキーワードが例えあったとしても、対して内容に変化が無いというのが、けいおんらしいといえばらしいのだが…やっぱり地味だな…
 うん、まぁ、それだけキャラクタ達に力があるという証明でもあるのだが。

 難点といえば。
 上述していますが、とにかく地味です。
 海外旅行までした上、それなりにハプニング等もあったのにも関わらず、御都合主義的なものが多少あったとは言え、それが決して劇的なものにはなっていないという。
 …むしろ、逆に凄いとは思う、なんでここまで盛り上がらないのだろうか、と。
 ただそれがつまらない、のではなく、安心感に繋がるワケなのですが。
 しかし、その安心感が仇になっている部分も。
 けいおんとしての面白さ、が重視されているので、特にTV版を見たことのない初見の人には、大きな起伏のないユルユルなほのぼのアニメに映ると思う。
 それを事前知識無しで楽しめるか、楽しめないか、は少し難しいかもね。
 せめて、卒業を目の前にした少女達の、それぞれの複雑な思い、これからの不安、そういった掘り下げがあれば、群像劇としても成立したのだろうけども。
 残念?ながら、そういう類のものではないため。
 独立した単一の映画、として優れているか、となると…
 そこはやはり頷けないところではある、毒にも薬にもならないというか。

 しかし、TV版好きなら是非見ておくべき。
 物語の発端から、最終話への繋ぎ方はお見事。
 TV版において、主要である唯/律/澪/紬の話って、実質文化祭で終了してると思ってるんですよ、最終話である卒業式は、梓の話という感じで。
 しかし、この劇場版により、ようやっと4人が卒業したのか…と。
 そんな思いにさせられる。
 特に終盤、屋上のシーンが素晴らしい。もうここがこの映画の全てと言ってもいいくらい、明らかに演出が違ったし、力の入れているシーンだと感じた。
 旅行で感じたこと、気づいたこと、梓のために出来ること、去っていく自分達のこと、今まで過ごしてきた高校生活のこと、全てここのためだったんじゃないかと。
 そこからTV版最終話に流れていくんだもんな。
 TV版最終話は、文化祭ん時に比べて蛋白だなぁ、と思ってたんですが。
 この劇場版で色々と、不満だった部分が埋まった気分。
 ただ、最終的なオチというか、ラストシーンなんですが…
 原作は大学に進学した4人のその後、が描かれていますけど、今回はあくまでアニメ版のけいおん、としてのケジメというか、ちゃんと終わりを提示して欲しかったと思う。
 何て言うか、こう、まだまだ続くよ!というか。
 余韻の残らないラストだったので…ちょっとスッキリしないんだよなぁ。

 そんな感じ。
 全体的な出来はとても良いと思います、ファン向けとしては太鼓判押せる。
 初見の人には…少女達のほのぼの日常モノ、と割り切れるのであれば何とか。
 かなり評判も良いみたいで親子連れもいるようですが、ファミリーアニメとしては地味なので、流石に子供には退屈に感じると思う。いくら原作がギャグ漫画とは言え。
 しかし、アニメ版けいおんはこれで終了…になるのかな。
 原作は大学生編、在学生編、と二つに別れて継続していますが。
 いずれは、これらもアニメ化するのだろうか。
 商業コンテンツとしてまだ衰退はしてないようだし、するんだろうなぁ…

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